関節リウマチ

関節リウマチの現状

関節リウマチにかかっている方は、日本で100万人ともいわれています。高齢者の方がなるものというイメージがありますが、実際にはどの年代でも発症し、特に30~40歳代の女性に多く発症します。関節リウマチの初期に現れる症状としては、朝起きたときの手足のこわばり、手くびや指などの関節の痛み、腫れ(はれ)、微熱、倦怠感、食欲不振などです。

関節リウマチの原因

人のからだには、細菌やウイルスなどの外敵から守るしくみがあり、これを「免疫」といいます。通常、自分の組織には反応しません。ところが、何らかの原因でこのシステムに異常が生じることがあり、免疫機構が自分の体の成分や組織を外敵と誤り、攻撃をして排除しようとします。関節リウマチに特徴的な腫れと痛みは、免疫機構に異常が生じ、その結果関節に炎症が起こって生じるものです。関節リウマチでは免疫細胞が関節に集まり、滑膜という組織を攻撃することで、関節に炎症が起こり、滑膜が増殖し、その影響で骨や軟骨が破壊されます。

 

関節リウマチの症状

関節リウマチの関節症状には、大きく3つの症状があります。
1.朝起きたときに手足を中心に、関節がこわばって動かしにくい状態になる。これを「朝のこわばり」といって、この状態が続くと、関節リウマチの可能性があります。
2.「関節の腫れと痛み」で、多くの場合、手の指や足の関節から症状が現れます。
  複数の関節が侵されることのほうが多いですが、早期発見を目的とした新しい分類基準では1か所でも関節に腫れ、痛みが続けば、関節リウマチの可能性も考えて検査を進めます。
3.「骨の変形と破壊」です。関節の腫れが続くと関節が侵されて骨が壊れ、また、筋肉や靱帯が損傷するため、関節が変形します。
関節リウマチの症状は、多くの場合手や足の関節から始まりますが、どの関節にも現れる可能性があります。特に、指の第2関節や指のつけ根の関節、手首に症状が現れることが多いのですが、指の第1関節が侵されることは稀です。関節リウマチの症状は、関節のみならず、他の臓器にも現れることがあります。全身症状として、だるさや37℃くらいの微熱、食欲不振、体重の減少、さらには貧血などの症状が現れることがあり肺線維症などの肺症状にも注意が必要です。また骨粗しょう症を合併しているが高いことが知られています。

関節リウマチの診断と評価方法

関節リウマチの診断は、まず、問診から始まります。関節痛が現れる病気にはさまざまなものがありますので、それらの病気との鑑別のためにも、非常に重要です。
診察は、関節を触って痛みや腫れがないか、関節の動く範囲などを調べます。
血液検査では、免疫の異常や炎症の有無、その程度をしらべます。
レントゲン検査では腫れ、痛みのある関節を撮影し骨の表面が欠けていないか、隙間が狭くなっていないかをしらべます。これらの結果を総合的に判断して関節リウマチかどうか治療が必要かどうかを診断します。また、診断が確定して治療を始めてからも、治療の効果や副作用を見るために、血液検査を定期的に行います。より良い治療を行うためには、症状の程度を知り、治療の目安となるものが必要になります。個々の日常生活の動作について細かく評価する方法として、20項目で評価するHAQがあり、当院でも使用しております。

関節リウマチの経過

滑膜に炎症が起き、関節に傷がつき始めるのが、発症後1~2年といわれ早期は関節の腫脹(はれ)を認めますが、レントゲンの変化はみられません。進行期には、関節の腫脹の増強とともにレントゲンにも骨の破壊が見られます。晩期になりますと、関節の破壊がさらにすすみ、関節の変形が著明になります。進行とともに関節としての機能が低下し、日常生活が不自由になります。炎症の程度をみるだけでなく、定期的にレントゲン検査を行って骨や軟骨の様子を確認することも重要です。関節での炎症が激しいほど、また長く続くほど次第に骨や軟骨が壊されてしまうリスクが高くそのまま放置しておくと関節全体が固まったり変形をきたし手術が必要になったり寝たきりになる場合もあります。したがって症状の強い人ほど十分な治療が必要になります。現在、関節リウマチを治療するうえで最も重要なのは、関節破壊の進行をとめ、リウマチの炎症をできるだけ早く十分に抑え込むことにより、関節破壊の進行を最小限に防止し、将来的に関節手術や寝たきりにならないようにすることです。関節リウマチの症状が十分に抑えられ関節破壊が進行しない状態を「寛解」と言います。

関節リウマチの治療

関節での炎症が続くと、次第に骨や軟骨が壊され、そのまま放置しておくと関節全体が固まったり、変形してしまうことがあります。関節リウマチの活動性を抑え込み、「寛解」と呼ばれる状態を維持すると関節破壊が進行しないことが分かっています。現在、関節リウマチの治療では、今ある痛みを和らげる、取り除くといった短期的な目標にとどまらず、病気の活動性を抑え関節の痛みや腫れがなく、炎症がない状態(臨床的寛解)、関節破壊を防ぎ関節破壊の進行が抑えられている状態(構造的寛解)、身体機能を維持し、日常生活に不自由がない状態(機能的寛解)が重要な目標として求められています。この3つの寛解を達成した後は、その状態を維持し続けることが長期的な目標になります。

治療は薬物療法を中心に行いますが病気の進行、機能障害の程度にあわせて薬物療法、リハビリテーション、装具療法を併用します。薬物療法はメトトレキサートなどの抗リウマチ薬や生物学的製剤などを使用して炎症や痛みを抑えるだけではなく、病気の進行を食い止めて関節が破壊されるのを防ぐことが治療目標になります。また必要に応じて手術などを行う事もあります。
どうしても寛解に至らない場合はある程度痛みをコントロールした状態(低疾患活動性)を目標にし日常生活に支障がない状態を目指し、維持することによりQOL(生活の質)の向上・維持に努めます。
※当院では大阪医科大学附属病院リウマチ膠原病内科にて合併症などの精査をしていただいたうえで抗リウマチ薬、生物学的製剤の導入をお願いしております。

当院で使用可能なリウマチの薬

抗リウマチ薬
  • リウマトレックス、メトレート(メトトレキサート)
  • プログラフ(タクロリムス)
  • リマチル(ブシラミン)
  • アザルフィジンEN(サラゾスルファピリジン)
  • ケアラム、コルベット(イグラチモド)
JAK阻害薬
  • ゼルヤンツ(トファシチニブ)
生物学的製剤
  • エンブレル(エタネルセプト)皮下注射
  • ヒュミラ(アダリムマブ)皮下注射
  • アクテムラ(トシリズマブ)皮下注射
  • オレンシア(アバタセプト)皮下注射
  • シンポニー(ゴリムマブ)皮下注射
  • シムジア(セルトリズマブペゴル)皮下注射
  • ケブザラ(サリルマブ)皮下注射

リハビリテーション

患者さんにとって少しでも病状の悪化を抑え、社会生活をできるだけ快適に過ごせることは生活の質を高める上で大変重要なことです。そのために大切なのがリハビリテーションです。当院では、理学療法士、作業療法士により関節の痛み、腫れをとり、関節の動く範囲を広げ、筋力を改善維持すことで日常生活動作を改善しよりよい社会生活を営めるようにするために行います。また、変形した関節の痛みや拘縮に対しては筋力強化や可動域訓練を行うことで関節・身体への負担を減らし、除痛と日常生活における動作の回復をはかります。また、人工関節などの手術を受けられた方の退院後のリハビリも行っております。

手術

メトトレキサートや生物学的製剤の使用により早期に効果的な治療を開始することが可能となり、関節の破壊や変形を食い止めることが可能にとなってきています。しかし一旦変形が進んでいった関節に対しては装具療法やリハビリテーションで充分な改善が得られない場合は手術治療を行うことがあります。手術が必要な場合は基幹病院にご紹介させていただきます。

関節リウマチの治療で重要なポイントは、早期に診断し、早期に治療開始しできるだけ早い時期に必要十分な治療を行うことです。寛解をめざして前向きに治療に取り組みましょう。

TEL.
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