骨粗鬆症・骨密度測定

骨検

当院の骨密度測定、骨粗鬆症への取り組み

骨密度測定2016年に躯幹骨(腰椎、大腿骨)の計測が可能なDXA装置であるPRODIGY Fuga-Cを導入しました。PRODIGY Fuga-Cは、脊椎や大腿骨を直接計測することができるため、より正確な予知が可能となり、高い治療効果につなげることができます。躯幹骨計測は骨粗鬆症治療ガイドラインでも推奨されていて、導入する医療機関も少しずつ増えてきています。
当院ではPRODIGY Fuga-C導入後、骨粗鬆症患者様に半年ごとの検査を行っています。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。「骨強度」はその7割が骨密度,3割が骨質により規定されており骨密度低下と骨質の劣化の結果、そのどちらかが低下しても骨強度は低下し、骨折リスクは高まります。
骨粗鬆症の有病数は50代から徐々に上昇し、60代女性の約3割、80代女性では約5割と、加齢とともに、有病率が増加しています。また男性より女性のほうが骨粗鬆症になりやすく骨量を維持する役割がある女性ホルモンであエストロゲンが閉経後に減少することが原因です。閉経によるエストロゲンの低下などにより、破骨細胞(骨を溶かす細胞)による骨吸収が骨芽細胞(骨を作る細胞)による骨形成を上回ると骨量低下や骨構造の破綻をもたらし、骨粗鬆症を引き起こします。
わが国における骨粗鬆症全体の患者数はおよそ1280万人(男性300万人,女性980万人)と推定されますが、そのうち実際、治療を受けられておられる人は約200万人であり、約8割以上の方が治療を受けておられません。
骨粗鬆症になりますと骨梁が減り、骨が脆くなって骨折が起こりやすくなります。
骨粗鬆症により骨折が起こりやすくなる部位は、椎体(背骨)、大腿骨頸部(もものつけ根)、橈骨(手首)、上腕骨(うでのつけ根)です。
椎体骨折は最も頻度が高く、自覚症状に乏しい骨折で骨折して初めて骨粗鬆症だったと分かることもあります。身長の低下と椎体骨折の発生は関係が深いといわれており、2cm以上の身長低下は、椎体骨折を起こしている可能性が高いと考えられ身長低下量が大きいほど椎体骨折発生率は高いと考えられています。自覚症状がないまま、骨折が進むと、腰背部痛、脊椎変形に伴う円背、身長低下、それらが原因の活動抑制や、消化器系・呼吸器系などの機能障害が起こり、日常活動の低下のみならず、生命予後をも悪化させます。また大腿骨頸部骨折は手術をしなければ寝たきりの原因になってしまう骨折と言われていますが「立った高さからの転倒」によるものが多くこのように立った高さからの転倒など、軽微な外力で生じる骨折のことを「脆弱性骨折」と言います。要介護となった主な原因は、「骨折・転倒」が11.8%を占めています。
椎体骨折は、50代から徐々に増加し、続いて大腿骨近位部骨折が70代後半から徐々に増加します。椎体骨折があると、大腿骨近位部骨折のリスクも高まることが報告されており、生活の質を守り健康寿命を伸ばすためにもまずは早い段階からの椎体骨折の予防が重要となることが示唆されます。特に症状がなくても骨密度の検査を受け、早めに予防や治療を開始して健康寿命を延ばしていきましょう。
また、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症などの内分泌性疾患関節リウマチや糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ステロイドの長期服用などにより骨粗鬆症リスクが上昇することもわかっています。これは特に続発性骨粗鬆症と呼ばれています。特に、男性や閉経前女性の骨粗鬆症では、続発性骨粗鬆症を強く疑いますが、閉経後の骨粗鬆症が必ずしも原発性とは限りません。

骨粗鬆症による骨折の危険因子

特に、骨折の既往歴、両親の大腿骨近位部骨折歴・現在の喫煙習慣・ステロイド薬の使用・関節リウマチなどの続発性骨粗鬆症の有無・アルコールの多量接種摂取習慣などは骨粗鬆症による骨折の危険因子でこれらはWHOが作成したFRAXという骨折リスクの評価ツールにある危険因子です。FRAXは、骨折の危険因子の有無や検査値を入力することで、10年間の骨折確率(骨折リスク)を表示します。当院でもこのFRAXによる骨折発生リスクを簡単に計算できる計算機を待合においております。FRAXの利用方法は、年齢または生年月日、性別・体重・身長を入力し、骨折の既往歴、両親の大腿骨近位部骨折歴、現在の喫煙、アルコール摂取量など、骨折の危険因子の有無を入力するとその人の10年間の骨折確率(骨折リスク)が表示され15%以上で薬物治療を考慮します。

当院受診時にこの問診票を記入しお持ちいただければ計算致します。

骨粗鬆症の検査、診断

当院では症状の有無、既往症などを問診し、レントゲン撮影、骨密度測定、血液検査などを行って診断しています。骨密度検査はX線を使用して腰椎、大腿骨の骨の量を測定するDXA法を使用しています。検査は10分くらいです。
血液検査では、骨の新陳代謝の状態を調べる骨代謝マーカーを測定します。また、他の病気が原因になっておこる続発性骨粗鬆症を見分けるためにカルシウムやリンを測定しています。DXAは全身どの部位の骨密度でも測定可能ですが、椎体と大腿骨の測定が推奨されています。骨量測定の精度が高く骨折リスクの判定や、治療効果を判定するために最適と言われています。
腰椎において骨量の平均値は20歳から44歳はほぼ一定ですが、閉経後は年齢とともに減少します。この20歳から44歳の腰椎の骨密度の平均値を若年成人の平均骨密度(YAM)といい、この値と実際の骨密度を比較して骨粗鬆症の診断を行います。なお、大腿骨近位部では20歳から29歳の骨密度の平均をYAM値とし実際の骨密度と比較し骨粗鬆症の診断を行います。
治療薬の選択・効果判定については、血液検査による骨代謝マーカーの測定を行っています。
骨代謝マーカーは治療の必要性に対する患者の理解をさらに高めたい場合、薬物治療を予定している場合、治療薬の選択に役立てたい場合、骨粗鬆症の病態などを評価する場合に必要な検査で薬物治療の効果判定のためにも,診断時の骨代謝状態評価が推奨されます。

知っておきたい骨の”量”と”質”の資料

骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症治療の最大の目的は、骨折の予防です。骨折は、患者の生活の質(QOL)や日常生活動作能力(ADL)を大きく低下させ生命予後にも大きく影響します。骨粗鬆症によって増大した骨折リスクを低下させるためには、薬物療法だけではなく、食事療法や運動療法などを含めて生活習慣を改善し骨折リスクを可能な限り低下させ、同時に、転倒の予防なども行い、骨折を起こさないようにすることが重要です。

食事療法

食生活では骨の主成分であるカルシウムを取るだけではなく、たんぱく質やビタミンD、ビタミンKなどをバランス良く接種することが大切です。

運動療法

運動で骨に力がかかると骨を作る細胞の働きが活発になります。さらに運動をすることにより筋肉がきたえられ転倒予防、骨折予防にもつながります。ウォーキング程度の運動をできれば毎日、少なくとも週に3回はするようにしてください。また、カルシウムの吸収を高めるビタミンDは紫外線によって皮膚でも作られますので日光に当たることも重要です。

骨粗鬆症の治療薬には、その作用機序から破骨細胞による骨吸収の抑制作用が主である骨吸収抑制薬と骨形成の促進作用が主である骨形成促進薬に分類され当院では下記のお薬を処方しています。

骨吸収抑制薬(骨が壊れるのを防ぐ) ビスホスホネート
SERM
抗RANKL抗体
カルトシニン
骨形成促進薬(骨を作るのを促す) 副甲状腺ホルモン(PTH)
骨吸収抑制と骨形成促進のバランスを整える薬 活性型ビタミンD3製剤

閉経後骨粗鬆症患者が初めて骨折する部位は、橈骨と椎体が最も多いと報告されています。
また大腿骨近位部骨折は70歳以降に発生が増加しますので70歳以上の方では大腿骨近位部骨折の予防を、70歳未満の患者では椎体骨折予防を念頭に薬剤選択を行います。
既存椎体骨折があると新たに椎体骨折を起こす頻度は約5倍、大腿骨近位部骨折を起こす頻度は約2.5倍と なり、ドミノ倒しのように次々に骨折が発生する危険性があります。
まずは椎体骨折を起こさせないことが大切です。また骨粗鬆症治療の代表的な内服薬であるビスホスホネート製剤で骨折予防効果を得るには、最低1年以上の服薬が必要と言われており骨粗鬆症の治療には長期的な治療が必要です。骨粗鬆症の治療には骨折の予防という最終目標はあるもののその治療目標が達成されるには他の生活習慣病である高血圧症や糖尿病などと同様に終わりのない治療が継続されなければないと思われます。
ドミノ骨折を防止するためには、まず最初の骨折を起こさないように薬物療法の開始、継続とともに骨折が発生した後の薬物治療はさらに重要で次の骨折発生を予防するためには不可欠です。

TEL.
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